ポパイがほうれん草を食べるとパワーアップするのはいいが、そのほうれん草が缶詰というのが不思議でならなかった。
だって、缶詰に入ったほうれん草なんて見たことがなかったし、大人になった今もそんなものは知らない。
とにかくポパイは缶詰から液状になったほうれん草を一気飲みすると筋肉が拡大して悪党をコテンパンにやっつけた。
のちに聞いた話では、アメリカの子どもたちがほうれん草がきらいで、健康によいほうれん草を少しでも食べてもらおうと
アニメのキャラクターに食べさせることにしたそうである。したがって、アメリカでは缶詰のほうれん草というのは一般的
なのだろう。
ぼくは4年ほどアメリカに留学していたことがあるが、その頃はポパイのことなんてすっかり頭になかったから
グローサリーストアでほうれん草の缶詰を探すことをしなかった。大体缶詰自体を買ったこともなかったと思い出した。
中身がなんであろうと。
完一さんの畑で取れたほうれん草(に限らず全ての野菜)は捨てるところがまったくない。葉が美味しいのは当たり前だが、
根本も部分が大変美味でいつも妻と取り合っている。ピンクからグリーンへの美しいグラデーションを持つこの根本は
仄かな甘みがありほうれん草独特の渋みと相まって非常に美味い。滋味あふれる味わいとはまさにこのことで、その美味さが
わからない子どもたちは見向きもしないが、僕たち大人はこの茎を目当てに食べているといっても過言ではない。
根本の奥まで土が入り込んでいて完全に洗い流すことができないが、これまた完一さんの土だから体に入っても平気だし、
すこしくらい食べたほうが健康にいいかもしれない。完一さんの野菜だと洗うことも適当になって、だからスープにすると底に土が
砂状になって沈殿することがよくある。もうちょっと洗ったほうがいいんじゃないと妻は言うがつい手を抜いてしまう。それも
これも安心安全の野菜を信頼する完一さんが作っているというのを知っているからできること。
さて、そろそろ冷蔵庫の野菜室が空っぽになるのだが、困ったぞ。