· 

たがやす倶楽部で土遊び

たがやす倶楽部の齋藤完一さんの畑に遊びに行ってきた。

 

新型コロナウイルスの影響で毎日が息苦しい。その息苦しさの主原因はもちろん未知のコロナウイルスが及ぼす影響にあるのだが、目に見えない存在ゆえに、それに対する人間たちの考え方の相違がその息苦しさに拍車をかける。だれもがリミテッドな知識をもとに正義を語っているのがぼくには息苦しくてたまらない。おそらく感染症の専門家でさえ「新型」だから「わかんねえよ!」というのが本音だろうが、専門家でないひとのほうがよっぽど「知っている」風である。もっとも、わからないと言えるのはわかっているひとであり、知らないひとほど知りませんと言えないのが現実かもしれない。

 

閉塞感たっぷりの都会を脱出して千葉県山武市にある完一さんの畑にやってきた。

空は澄み渡りスカイブルー。柔らかな日差しが降り注ぎ地面をそしてぼくらの体を優しく包み込む。

耳を澄ませばあちこちからウグイスが法法華経。

植物性の発酵堆肥で育てられた畑の土はふかふかで、表面の温められた土の先がひんやりとつまさきに心地いい。

 

自分の背丈より高い菜の花畑に足を踏み入れるだけで大冒険。

ミツバチがぶんぶんと飛び交い、その羽音が聞こえるほどにあたりは静かだ。

そう、静かなんだ。

いつも唸るようなロードノイズが伝わり続ける都会とちがって、ここにはそうした騒音がほとんどない。

冷涼な風が指の間をくるくると踊って、首筋の汗を冷やして去っていく。風の子らが娘の肩にとまって囁いていた。

どんなおしゃべりしたのと聞いたけれど、娘は笑って教えてくれない。きみたちだけの秘密なんだね。

ミツバチたちはせっせと仕事に精を出す。風の子らに構っている暇はないんだよ。俺たちはなにしろ忙しいんだから。

ぺんぺん草がさらさらを音をたてて風の行く先を教えてくれる。風の子らはぼくの指先をすり抜けて娘とおしゃべりしに

やってきた。なぜわかったかだって?だって娘がひとりで笑ったもの。