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試されるGRIT

人間だれしも何かと思い立つものである。思い立っただけでなにもしないひとがいる。思い立ったが吉日とばかりに行動に移すひともいる。だが一番大切なのは思い立ってからずっとやり続けることである。

 

三日坊主という言葉の一般性を思うにつけ続けるということの難しさ厳しさというのは今も昔も変わらない。ひとは様々なことを思いついてやらないことの理由にするが、結局のところやらないことには変わらない。

 

気持ちが高揚しているときはやる気に満ちあふれているが、進展を感じなくなると自ら進展を止めてしまう。私の座右の書である「やり抜く力」の著者アンジェラ・リー・ダックワースさんによれば、学校の成績の優秀者もアメリカ軍の中で一番厳しい訓練を課す部隊で脱落しない隊員もスペルコンテストの優勝者(難しい単語の綴をいくつ暗記していられるかというコンテスト。日本ならさしずめ漢字コンテストになるか)も皆卓越した才能の持ち主だったわけではなく、一重にやり抜く力があったからだと言っている。

 

ところで、アメリカで大学院に入るにはGREという共通試験を受ける必要がある。GREである一定の点数に達しないと大学院には進めないのであるが、だからといって日本の入試のような難しさはない。試験は英語と数学があり、GREの良いところは二つ合わせた合計点で評価される。数学は中学生レベルの内容だから、日本人は自ずと数学でボーダーライン突破を目指すことになる。なぜかというと、英語の試験が結構難しい(かった)のだ。今まで見たことがない単語がずらずらと並ぶ。これは例えるなら日本語がそれなりに話せるようになった外国人にいきなり古文のテストをやらせるような感覚である。私はお手上げだった。数学はたぶん満点取れているはずだから、数学がなかったら私は大学院へは進めなかったろう。(ちなみに私は大学は理系を出ている)

 

なにが言いたいかというと、英語にも恐ろしく難しくて日常での頻出度が低い単語が山のようにあるということである。スペルコンテストは小中学生の子どもたちがそうした単語の綴を競うコンテストであり、その優勝者はひたすら単語の習得をやり続けたということである。

 

GRIT JAPANを立ち上げた当初から、これは私にとって難しい仕事になるとわかっていた。それはただ一つのコンテンツを制作するのではなく、仕組み作りだからである。そしてその仕組みを運用していくための組織づくりでもある。

順風満帆のときは誰も自らのGRITを疑ったりはしない。GRITが試されるのは、それとは反対の牛歩のごとくな状況においてである。

恐怖が背後から襲ってきてぞぞぞとする。ダークサイドが忍び寄る。しかし恐怖を感じているうちはまだ大丈夫。ダークサイドに落ちるのは恐怖ではなく安易さであるからだ。